TSMH’s blog

多趣味人間のメモ

特定疾病(16疾病)について

特定疾病とは、
介護保険施行令第2条で定められた16種類の病気のことを言います。
65歳以上の方が発症することが多く、40歳~64歳までの年齢層でも発症があります。
また、3~6か月以上継続して要介護または要支援状態になる割合が高いと考えられる病気も含まれています。

介護保険制度について
通常は、介護保険サービスを利用できるのは要介護認定を受けた65歳以上(第1号被保険者)の方だけですが、特定疾病が原因で要介護認定を受けた場合は40歳~64歳(第2号保険者)の方でも介護サービスの利用に介護保険が適用されます。

【16種類の特定疾病

➀末期がん

介護保険特定疾病に指定されているのは「末期のがん」です。致死性を持ち、治癒困難な状態であることが要件です。
治癒困難な状態とは、余命が6ヵ月程度と診断された状態

がんは40代以降に発症することが多く、男性の発症率がやや高い傾向にあります。発症する部位は、2018年の統計によると大腸、胃、肺、乳房、前立腺の順に多くなっています。

発症初期はほとんど症状がないのが特徴で、痛みや食欲低下といった症状が見られる場合は進行性のがんの疑いがあります。
がんは、ピロリ菌や肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス感染などが原因の場合もありますが、飲酒や喫煙など生活習慣の乱れが原因となっていることが多いです。

②関節リウマチ

関節リウマチは、全身のあらゆる関節に炎症が発生して痛みやこわばり、手足の変形などの症状が現れる病気で、筋力低下などにより身体を動かしにくくなります。30代~50代の女性が発症することが多いと言われ、発症の原因は、遺伝的要因や喫煙、感染などと考えられていますが、詳しくはよくわかっていません。

自覚症状の5項目
①朝に起こるこわばりの持続時間が1時間以上続く
②関節腫脹または関節液貯留が同時に3ヵ所以上
③手首、近位指節間関節(PIP)、中手指節間関節(MCP)において1ヵ所以上の関節腫脹
④両側の同じ部位で関節炎が同時に起こっていること
⑤リウマトイド皮下結節

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋委縮性側索硬化症とは、脳の運動神経の障害によって体の運動機能に影響を及ぼす病気です。

具体的には以下のような症状がみられます。
● 構音障害・嚥下障害
● 呼吸困難
● 手足の筋力低下
● 認知症

60歳前後で発症することが多いと言われていますが、発症の原因はわかっておらず、有効な治療方法もまだ確立されていません。発症初期には、よくつまずく、衣服のボタンが留めにくい、ろれつが回らないなどの症状が見られ、徐々に進行していくと筋萎縮や筋力低下といった症状が現れて、思うように体が動かなくなります。

④後縦靱帯骨化症

後縦靱帯骨化症とは、後縦靱帯と呼ばれる背骨の中を縦に通る靱帯が骨化する病気のことです。
神経が圧迫されるため、四肢のしびれや運動障害・知覚障害が引き起こされます。
主な症状としては手足のしびれ、足が思うように動かない、下肢の脱力などが挙げられます。重症化すると立ち上がることや、歩くことが難しくなり、日常生活への支障をもあります。
後縦靱帯骨化症は50歳前後で発症することが多く、女性よりも男性の発症率が高いとされています

⑤骨折を伴う骨粗鬆症

骨に起こる疾患で、小さな穴が大量に発生して骨がもろくなります。
骨がもろくなり日常生活のちょっとした負荷や軽い転倒などで骨折してしまう状態
のことをいいます。骨粗しょう症になると、背骨、股関節、手首、肩を骨折することが多くなります。
骨粗しょう症は50代以降の女性の発症率が高く、加齢などによる骨量の減少、栄養不足、運動不足などが主な原因とされています。また、閉経後のホルモンバランスの変化も影響していると考えられています。

⑥初老期における認知症

認知症の中でも65歳未満で発症する認知症若年性認知症とも呼ばれます。

初老期における認知症と診断される認知障害
①失語(言語の障害)
②失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作を遂行する能力の障害)
③失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識又は同定できないこと)
④実行機能(組織化する、計画を立てる、抽象化する、順序立てる)の障害

なお、意識水準の低下によって起こるせん妄は対象外です。

せん妄の症状
● 時間や場所がわからくなる
● 睡眠リズムが崩れる
● まとまりのない言動を繰り返す
● 注意力や思考力が低下する

⑦進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病パーキンソン病関連疾患)

■ 進行性核上性麻痺
「眼球運動障害や姿勢の不安定さ、後ろ側への倒れやすい」といった症状がみられる
大脳皮質基底核変性症
「肢節運動失効や認知機能障害」といった症状がみられる
パーキンソン病
「安静時振戦や姿勢歩行障害」といった症状がみられる

脊髄小脳変性症

脊髄小脳変性症とは、運動を司る小脳に異変をきたす病気です。

発症原因が特定されておらず、以下のような症状がみられます。
● 運動失調
● 末梢神経症
● 自律神経症
● 高次機能障害

30代~40代で発症することが多く、症状の進行はとてもゆっくりという特徴があります。

⑨脊柱管狭窄症

脊柱管(脊椎の中にある空間)が狭くなってしまうことで、中を通る神経が圧迫され、さまざまな症状が現れる病気です。

以下に該当する場合に特定疾病として認められます。
● 頚椎部、胸椎部、腰椎部のうち、脊柱管の狭小化がみられる
● 画像所見において、脊柱管の狭小化によって神経の圧迫が確認できる
● 画像上の脊柱管狭小化と現れている症状の間に因果関係がある

痛みやしびれだけでなく、筋力低下や運動障害、排尿・排便障害といった症状が見られることもあります。この病気は中高年の方が発症することが多く、加齢や労働、背骨の病気の影響で背骨、椎間板、靱帯などが変形することが原因で発症します。

⑩早老症

早老症は、遺伝子の異常によって引き起こされます。若年性白内障、白髪、脱毛、鳥様顔貌(鼻がとがって鳥のような顔つきになる)、軟部組織の石灰化など、実際の年齢よりも早く老化の兆候が全身に現れる病気の総称のことです。

早老症の代表的な疾患であるウェルナー症候群は、世界の発症者の約6割が日本人であると言われており、進行すると骨粗しょう症や糖尿病、脂質異常症、悪性腫瘍などを併発することが多いです。

⑪多系統萎縮症(MSA)

多系統萎縮症とは、非遺伝性の脊髄小脳変性症による代表的疾患です。
発症の原因はまだ解明されていません。

線条体黒質変性症
50歳以上に発症することが多い。
表情が乏しくなる、筋肉がこわばる、動作が緩慢になる、などの症状がみられる。
■ オリーブ橋小脳萎縮症
40歳以降で発症するケースが多く、日本では最も患者数が多い多系統萎縮症。
起立時・歩行時におけるふらつき、ろれつが回らない、手先を正確に動かせないなどの症状がみられる。
■ シャイ・ドレーガー症候群
50歳以降で発症するケースが多い。
立ちくらみ、尿失禁といった自律神経の障害症状がみられる。

⑫糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症は、糖尿病が進行して起こる三大合併症と言われており、それぞれの診断基準を満たすと特定疾病として認められます。

■ 糖尿病性神経障害
感覚神経、運動神経、自律神経のいずれかがダメージを受けることで症状が現れます。主な症状として、手足のしびれや痛み、立ちくらみなどがあります。症状の現れ方は、どの神経がどの程度傷ついたかによって異なります。

■ 糖尿病性腎症
腎臓の働きが低下してしまうことで、むくみや息切れ、食欲不振などの症状が見られるようになります。初期に自覚症状はないですが、進行して腎不全を引き起こすと吐き気や嘔吐、筋肉のこわばりなどの症状が現れます。

■ 糖尿病性網膜症
網膜の血管が傷ついて眼底出血する疾患で、初期の段階では自覚症状がありません。かなり進行してから、飛蚊症や視野が欠けるなどの症状が現れます。

⑬脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳梗塞脳出血くも膜下出血など、脳血管の異常によって起こる疾患の総称のことです。
手足や顔の片側の麻痺やしびれ、記憶障害、言語障害、注意障害といった高次機能障害と呼ばれる症状が現れ、後遺症が残りやすいことが特徴です。
どのような症状が現れるかについては、脳のどの部分がどの程度ダメージを受けたかによって異なります。
脳血管疾患は60代以上の発症率が高く、高血圧や生活習慣病が原因であることが多いです。

⑭閉塞性動脈硬化症(ASO)

閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により足の血管が細くなる、詰まるなど血流が悪くなる病気のことです。
足先まで血液が届けられなくなり、足に冷感やしびれ、痛みが出ます。

以下のような場合に特定疾病とみなされるケースがあります。
● 歩行中に足のしびれや痛みが発生している
● 安静にしていてもはっきりとした痛みを覚える
● 潰瘍や壊死がある

慢性閉塞性肺疾患COPD

慢性閉塞性肺疾患とは以下の病気の総称です。
● 慢性気管支炎
● 肺気腫
● 気管支喘息
● びまん性汎細(はんさい)気管支炎
咳痰、呼吸困難といった症状がみられる場合に、特定疾病とみなされます。

主な原因は、長期にわたってたばこの煙を吸入することで、40歳以上の喫煙習慣がある男性の発症率が高くなっています。喫煙年数が長く、喫煙本数が多い人ほど発症するリスクが高まると言われています。喫煙以外には、大気汚染物質(排ガス、工場の煙、PM2.5など)や職業上の化学物質、粉塵などが原因となって発症することもあります。

⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

変形性関節症になると、両側の膝関節・股関節が変形して動かしづらくなり、痛みや腫れなどの症状が現れます。

変形性関節症は、関節の軟骨がすり減って炎症を起こすことが原因で、発症初期は動き始めに痛みを感じます。少し休むと痛みが和らぐため、病院を受診せずに放置してしまうケースが多いですが、進行すると階段の昇り降りが困難になる、歩くと常に痛みを伴うようになるなど日常生活に支障をきたします。40歳以降で発症することが多く、発症率は男性よりも女性の方が高いです。

 

参考文献:

特定疾病症とは?16種類の解説と、特定疾病症と診断されたときの対策を紹介! | フランスベッド

https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/specific-disease/